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​情報紙 SECOND

SECOND Column Page

​ラーメン外伝128

〜幻のラーメン17〜
​大砲ラーメン 店主 香月 均史

シーン18 立ち退き

 

 太った男の脂ぎった顔が、電気屋のテレビの画面一杯に写っている。その男は満面の笑顔でわめいている。

 「このイナトミ、皆様のお陰で当選いたしました!今後は不肖イナトミ、全身全霊、一命を賭してこの久留米のまちのために・・・」画面では稲富の顔を遮るようにレポーターが登場。

 「先日の公職選挙法違反事件により穴の明いた議席を埋める形で、繰り上げ当選を果たした稲富太郎氏の談話でした」電気屋の前でテレビを見ていた昇は、リヤカーを引き始めた。夜、屋台にはテレビと同じ脂ぎった満面の笑顔がいた。

 「のぼっちゃん、アンタのお陰ばい!得票数は山田と俺は一票差ばい!一票ばいイッピョウ!のぼっちゃん、あんたのその一票がなかったら、俺はシマエとった。カアチャンにも逃げられとった」

 昇は黙ってうなずきながらコップに酒をついでいる。

 

* (光)『実は父ちゃんは今回も含め、生まれて一度も投票に行ったことがありません』

 

 昇は稲富の前にコップを置いて言った。「祝い酒たい」「ありがとうのぼっちゃん。あんたにはいつも助けられるのォ」カウンターに両手をついて頭を下げた稲富は、そのままコップ酒の表面張力に口を運んだ。洗った丼をふきんで拭きながら嘉子が言った。

「ところで稲富さん、役所の方では、このあたりの屋台を立ち退かせようという話になっとるって本当ね?」酒を飲み干した稲富は、コップを置き、袖で口を拭きながら答えた。

「うーん、そうみたいやね・・・」すかさず嘉子は、やや詰め寄った。「議員さん、あんたの力でどげんかならんね?」稲富は当惑しながらも気の毒そうに言った「頑張ってはみるばってん・・・時流というやつにはかなわんよ」拭きかけの丼を置いて、嘉子は身を乗り出した。やや興奮している。

「時流っちゃ何ね?爪に火を灯して働く者ば払い除けるのが時流ね?」「もういい」昇は静かに嘉子を制した。

 

 春の長雨がここ二、三日続いていた。雨空から見下ろせば、路地裏に二つの黄色い傘がもつれ合うように歩いている。光とその友人である。小綺麗な格好をした裕福な家育ちの友人が言った。

 「本当に家の中にキノコなんて生えるの?信じられないよ」「ウソじゃなか、まあとにかくウチにおいで」二つの黄色い傘は長屋の前で止まった。「ここが僕ん家、上がらんね」光の誘いに友人は呆然としている。「ここが君ん家?上がれって・・・玄関は?」「ゲンカン?入り口のこと?それならここがゲンカンたい」

 光は古いガラス戸をガタガタと開けた。友人が恐るおそる光の後に続くと、そこには上がりがまちに片足を置いて、吽形の顔で生肉をさばいている昇の姿があった。昇の白い前掛けには肉の血液があちこち付着している。光の友人は立ちくらみを覚えた。それでも友人は遠のく意識と戦いながら、親の躾どおりの挨拶を実行した。「こ、こんにちは、ぼ、僕は藤田純一郎です」

 牛刀を向けながら昇は言った。「光んダチか?」藤田純一郎は気を失った。

 数分後、光と純一郎は並んで、腐った畳に生えた一本の白いキノコに顔を寄せている。目を丸くした純一郎はつぶやいた。「すごい・・・本当にキノコだ。本物だ」光は自慢気な顔をしている。そこに嘉子が、粉末ジュースの入った欠けた湯飲みを運んできた。振り返った純一郎は興奮しながら嘉子に言った。「あ、ありがとうございます。おばさん、それにしてもすごいですね。お家の中にキノコが生えるなんて!」

 嘉子は昇と目を合わせ、うつむいた。大人の心情など解らぬ純一郎は饒舌になった。

 「僕ん家なんか大理石のリビングにも、そこにあるグランドピアノにも、どこにもこんな美しいキノコなんて生えていない!」昇と嘉子は一段とうつむいた。

 「なんて素晴らしい、そして珍しいお宅なんだ!」昇と嘉子の顔は赤くなった。

 長屋の外。道行く人が足を止めている。果てしなく続く純一郎の感嘆の叫び声・・・。

 「ああ素晴らしい!さらにカゴの中には白いネズミが飼われているけど、狭い二段ベッドの下には黒いネズミが放し飼いにしてある!」

 昇はつぶやいた。「嘉子・・・引っ越したかぁ」

​ラーメン外伝127

〜映画「ラーメン侍」幻の脚本 16〜
​大砲ラーメン 店主 香月 均史

シーン16 雑食

 筑後川の堤防に、菜の花の黄色い絨毯が敷き詰められた。春の陽を浴びた川面が、柔らかに光っている。

 堤防の上を昇と光を乗せたスーパーカブ(バイク)が土煙を立てながら走っている。それは新車である。二人は筑後川の小さな支流である高良川の源流を目指している。

* (光)『父ちゃんは僕を川遊びに誘って くれました』

 カブは山あいの林道の轍を避けながらヨタヨタと走り、やがて小さな谷川に着いた。「光、ここにゃあ沢ガニやホウジャ(カワニナ:小型の巻き貝)がいっぱいおるぞ」冷たく、清らかなせせらぎで光は水遊びをはじめた。「光、ホウジャを捕れ」

 昇はせっせと川原の石でカマドを作り、枯れ木や流木の焚き火の上に、川の水を入れた飯盒を乗せている。それが沸騰すると、光が獲ったカワニナと一つまみの塩を放り込み、一煮立ちさせると〈カワニナの塩ゆで〉が出来上がった。「食べ方ば教えちゃる」昇は細長い円錐状の貝の頭を五円玉の穴に差し込み、頭の先をポキリと折り。その折れた殻の頭に口をあて、ちゅるりと中身を吸い込んだ。何とも野趣あふれる食べ方である。「うん旨い、お前も食え」光も見よう見まねで食べはじめた。意外と美味であった。

 すると昇は川の中の石をそこら中ひっくり返して、沢ガニを捕りはじめた。光がそれも煮るのかなと思いきや、あろうことか、そのカニを生きたまま口に放り込み、バリバリと食べはじめた。昇の唇からはカニのハサミが出てる。そのハサミはまだ動いている。光が驚きと恐怖で見つめていると、オヤジはそのハサミを指でヒョイと押し込み、何食わぬ顔(食ってるくせに)で生きた沢ガニを平らげてしまった。

* (光)『父ちゃんの場合、食べ物の好き 嫌いが皆無というより、イノシシのよ うな雑食人間でした』

 その夜の屋台。外では選挙カーの声が聞こえる。「ワタクシは久留米市議会議員立候補のイナドミ、イナ ドミタロウでございます。はい弾丸ラーメンとキンタマ焼き鳥の皆様、大変お疲れ様でございます。イナドミでございます。のぼっちゃーん、元気のー?イナドミば頼んどくばーい。わーはっは」カウンターの山村が言った。「稲富さんはまた出るばいの。今年落ちたら二連敗ばい。懲りんのぉ。ところでのぼっちゃん、さっきからせっせと何をむしりよると?」スズメの羽たい」「へぇ、どこで捕ってきた?」「隣のタマからもらった」村山はあきれた。「そら猫から横取りしたとやろうもん」

 昇はとぼけた顔で答えた。「猫のくせに俺の前で自慢そうにスズメをいたぶりよったけん、俺がスズメを助けてやったったい」昇は隣でせっせと焼き鳥を焼いている端午に声をかけた。

 「おーいダンゴ、ほら、これを焼いてくれ」羽をすっかりむしり取られたスズメを端午に放り投げた。端午はそれを受け取り、黙々と焼きはじめた。 

* (光)『父ちゃんはイノシシというより プレデター(捕食者)でした。獲物を 横取りされた隣のタマは家出したそ うです』

 「イナドミタロウでございます」再び選挙カーがやって来た。一段とスピーカーの音量が増している。

 「のぼっちゃ〜ん、ほんのこつイナドミば頼んどくば〜い。今度落ちたらウチのカミさん出て行くげな〜」

​ラーメン外伝126

〜映画「ラーメン侍」幻の脚本 15〜
​大砲ラーメン 店主 香月 均史

シーン15 運命

 目前に二つの手の平が差し出された。山村と端午のものである。「きょうも視てください!」声を揃えて二人一緒に手を突き出された清美は困惑している。すると突然屋台の中から昇のどなり声が聞こえた。通りかかった石焼き芋屋は腰を抜かしながら足早に逃げ去った。

 昇はカウンターの上台を叩きながら、久々に阿形の顔になっている。二人の男たちは顔面蒼白で固まっている。

 「俺はにゃ、この屋台に命を賭けとるったい!それをやめろだの、立ち退けだの、お前らは昼は役所の机でてれっと鼻くそホジっとるだけで給料もろうて、夜は酒飲んでさるき回っとるだけやろ!俺たちゃ夜中まで命張っとるんぞ!泣く子も黙るウシミツドキまでぞ!」

* (光)『それを言うなら〈草木も眠る〉でしょ』

 二人の男は鞄を小脇に抱えて、そそくさと退散した。昇は二人の背中に啖呵を切った。

 「あさって来やがれ」

*(光)『・・・・』 

 「何が歩道の整備だ、駅前開発だぁ、新年早々、最初の客がアレか、胸くそ悪か」昇はコップに酒を注ぎ、一気に飲み干した。「でもねぇアンタ、その話、もう役所で決まったんやないと・・・」心配気な嘉子に昇は言った。

 「バカタレ、そげなコツは勝手に決めさせん。俺でっちゃ清き一票の持ち主ぞ。役所に勝手なコツぁさせん」

 嘉子はつぶやいた。「ばってん、こげな屋台の運命っちゃ・・・はかないもんかも・・・」昇は二杯目の酒を注いだ。

 そんなところへ、山村と端午が揃って暖簾をくぐって来た。なぜか二人は目を赤く腫らしている。「どうしたお前たち?デヤし合いでもしたか?」「アニキ。聞いて下さい」端午は潤んだ声で語りはじめた。「清美ちゃんはカワイソウなんですよぉ」「ああ、あの手相の姉ちゃんか?」「そう、その手相の清美ちゃんは・・・」

 道頓堀の角で、清美は二人の手をそっと降ろしながら言った。「私には主人がいました。でも、主人は私が身籠もったときに病気で亡くなりました・・・。そのとき私は決心をしました。主人の面影だけを胸にしまい、お腹の子をひとりで生んで、ひとりで育てるって・・・そして男の子が生まれました」屋台のカウンター越しに山村は涙声で言った。

 「そんでね、のぼっちゃん、その子がね、その男の子はね・・・、七歳のときに交通事故で亡くなったげな・・・、あんまりやろ?・・・悲しすぎるばい」清美は涙ぐみながら、それでも無理に笑みをたたえて言った。「・・・だから、光くんを見るたびに・・・息子を・・・」

 

−(回想)清美は光を見つめながら

 「光ちゃんはすくすくと育ちますよ。やがて大きくなって、きれいなお嫁さんをもらって、かわいい赤ちゃんが生まれて・・・」清美の瞳は潤んでいた。そして人の運命って・・・いったい何だろうって。そして私は占いの勉強をしました。わずかでもその運命ってものを理解したかったから・・・。人の一生の筋書きを書く神様がいるとすれば、その神様に少しでも近づいてみたかったから・・・」 

 翌日、山村と端午は道頓堀の角に立っている。そこに清美の姿はなかった。その翌日も、そのまた翌日も、清美は現れなかった。

*(光)『山村のおじちゃんとダンゴ兄ちゃんの恋も、はかない運命でした』

 やがて冬は終わろうとしている。道頓堀の角には清美の姿も、山村たちの姿もなく、そこの日だまりには、一輪の白いタンポポが咲いていた。 

​ラーメン外伝125

〜映画「ラーメン侍」幻の脚本 14〜
​大砲ラーメン 店主 香月 均史

 明けましておめでとうございます。本年もコラム「ラーメン外伝」を宜しくお願い致します。

 前号十二月のクリスマスに続き、今号は「正月」の時期と重なった目出たいシーンをお届け致しまする。

 

シーン14 長屋の正月

 

 元旦の朝、光が目を覚ますと、またも枕元に何かある。それは祝いの〈のし袋〉だった。のし袋には、明らかに昇の筆跡で〜おとし玉 三太より〜と書かれてあった。封を開けると、百円札が一枚入っていた。

 二段ベッドを駈け降りると光は昇に抱きついた。「父ちゃんありがとう」 

 昇はわざとらしくとぼけて言った。

 「何のこつか? 礼なら三太のオヤジに言え。それより、きょうは元旦ぞ。別の挨拶があるやろ?」

 「あ、そうか。では、父ちゃん、母ちゃん・・・」

 玄関が開いた。「あけましておめでとうございます」端午の声がした。後ろにはきなこがいる。

 「あけましておめでとうございます」きなこは美しい着物姿である。その後ろには善次郎がいた。

 「アニキ、アニキのお陰で、こうやってきなこに着物も買ってやれたし、何ちゅうてもオヤジの目の手術もできた。ほんに感謝しとります」

 端午は鼻をすすった。

 善次郎も深く頭を下げながら言った。

 「息子たちが大変お世話になっております。お陰さまで親子三人で暮らすこともできました。本当に・・・」

 昇は手をふりながら「よかよか、さ、上がらんの」

 

 長屋の軒のツララから滴がひとつ落ちた。

 屋内では宴もたけなわである。

 「♪あの娘をペットにしたくってニッサンするのはパッカード♪」

 端午が小林旭の〈自動車ショー歌〉を歌いながら踊っている。振り付けはなぜか〈安来節(どじょうすくい)〉である。鼻の五円玉も皆の笑いを誘っている。

 昇も一升瓶を持ったまま踊りはじめた。

 全員大笑いしながら手拍子をしている。

 

快晴の空には、いくつかの凧が揚がっていた。

 どこからか羽子板の音がきこえる。

​ラーメン外伝124

〜映画「ラーメン侍」幻の脚本 13〜
​大砲ラーメン 店主 香月 均史

映画「ラーメン侍」で世に出ることのなかった幻の脚本が、本誌を借りて日の目を見せていただき丸一年。今号は偶然にも今月の時節に合致するシーンのお披露目となった。このシリーズ、もう暫くお付き合いをいただければ有難い。尚、これまでの話の流れは「久留米・大砲ラーメン」のオフィシャルサイト(PC・スマホ)にてバックナンバーを掲載中。

 

シーン14 クリスマス  

 どこからかジングルベルの曲が聞こえる。連結屋台はすでに行列屋台になっていた。満席の弾丸ラーメンの客の中には、パーティ用の派手な三角帽子を被った酔っぱらいもいる。端午の焼き鳥コーナーも満席である。昇は麺を揚げながら大声で端午に言った。「おーいダンゴー、とり団子を三本焼いてくれー、ダンゴ、団子ぞー」客は笑っている。昇の商売は軌道に乗った。

 

 深夜の屋台閉店後、端午はきなこに片付けを預けて飛び出した。「すぐ戻るけん」端午は駆けながら小脇に何か抱えている。クリスマスのプレゼントらしい。道頓堀のゲート下に端午がたどり着くと、そこには清美の姿はなく、代わりに山村が立っていた。山村も何やら大きなプレゼントの包みを持っている。振り返って端午に気づいた山村は言った。「クリスマスは休業のごたるぞ」端午は、弾む息を押さえながらうなずいた。山村はニヤリと笑いながら茶化すように言った。「お前のプレゼントは何や?」「言わんです」「教えんかコラ。どうせテキ屋の売れ残りのバッタもんやろ?」「そげなんじゃなかです」「そう言うヤマさんのは何ですか?どうせカンナかノコギリでしょう」「にやがんな(ふざけるな)、俺にはでりかしぃちゅうモンがある。お前はそげな舶来語すら知らんやろ」「進駐軍のコトバやら知らんでよかです」この二人は恋敵でありながら、仲が良いのか悪いのかわからない。二人はいつまでもゲートの下でもつれあっていた。

 牡丹雪が粉雪に替わった。

 

 翌朝、長屋は雪で覆われていた。朝の雪の静けさのなかで、光は枕に違和感を感じて目を覚ました。枕とベッドの間に、何か無造作に押し込んである。光は寝ぼけまなこでその包みを見た。それは我が家に縁のない高級百貨店〈井筒屋〉の包装紙。そこにはメモが添えられていた。光は新聞折込みの裏面のメモを読んだ。〜メリクリマースひかるくん 三太より〜と、書かれていた。誰が見ても昇の筆跡であった。光が包みを開くと、新品の黒板とチョークのセットだった。二段ベッドを駈け降りると光は昇に抱きついた。「父ちゃんありがとう」昇はわざとらしくとぼけて言った。「何のこつか?礼なら三太のオヤジに言え」

 

 昇は嘉子に商売の提案をしていた。「にゃ、思わんか?ショウガ抜きにしてくれだの、ネギ抜きにしてくれだの、ほんに客はしぇからしか(うっとうしい)。だけん、ショウガもネギもカウンターに置いといて、客に自分で入れさせるったい。そげんすりゃ好かん奴は入れんやろうし、何ちゅうても、俺たちの手間がはぶけろうが」

*(光)『お客さんより、自分の都合を優先するところが、父ちゃんの商道でした』

 善次郎の病室。

 室内はカーテンで遮光されて薄暗い。医師がペンライトで善次郎の目を見ている。後ろには端午ときなこが心配そうに立っている。医師はペンライトを胸ポケットにしまいながら、二人に振り返った。

 「術後の経過も良好で、さきほど包帯を取りました。まだ薄ボンヤリですが、もう見えるはずですよ」医師は二人をベット脇に招いた。端午ときなこは善次郎の顔を、そっとを覗き込んだ。半開きのまぶたで善治郎が言った。「端午、美奈子・・・立派な大人になって・・・」「見えるんやね!お父ちゃん!よかったね」きなこは善次郎の手を握りしめた。善次郎は微笑み、片方の手できなこの頭をなでながら言った。「ありがとう・・・」

 

 その夜、雪を被った弾丸ラーメンから昇のどなり声が聞こえる。昇はカウンターの客を指さしている。

 「コラァ!そこの学生!ネギ入れすぎネギ!コラコラお前、お前たい!ショウガの入れすぎ、スープが真っ赤やんか!」客は皆、恐れおののいている。割り箸を割る手が震えている者もいる。「タダやけんちゅうて、ガバガバ入れるな!バカタレどんが!」昇の後ろには、光の古い黒板が掛けてあり、そこには〜ネギ・ショウガはご自由にどうぞ〜と書かれている。昇のどなり声が雪の夜空に吸い込まれてゆく。

*(光)『父ちゃんの辞書には〈おもてなしの心〉という言葉はありませんでした。そして翌日、父ちゃんは客席のネギとショウガを引っ込めてしまいました。』

 どこからかジングルベルの曲が聞こえる。

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